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- ① そもそも、なぜ新しい施設が必要だったのか
- ② 「ごみ処理」から「資源循環」へ
- ③ そして、真庭市は実証実験から始めた
- ④ ここが今回、一番すごい
- ⑤ そして、施設の「場所」を公募した
- ⑥ 市民説明会も7会場で開催
- ⑦ 結果、6件の応募
- ⑧ 「受け入れてくれる地域」を探すのではなく、
- 「地域から手を挙げてもらう」
- ⑨ そして「施設をつくって終わり」ではない
- ⑩ 「液肥をつくったけど使われない」を防ぐ
- ⑪ さらに「誰が施設を運営するのか」
- ⑫ さらに施設そのものも「競争」で決めている
- ⑬ 液肥濃縮施設も同じ考え方
- ⑭ 真庭市が13年間でやったこと
- ⑮ そして、今も「循環」を改善している
- 📝 吉村メモ
なぜ、真庭市では「し尿・生ごみ処理施設」の建設地を公募したのか。
― 「迷惑施設」ではなく「地域資源の拠点」に変える行政の挑戦 ―
今回、私がこの事例を取り上げたいと思ったのは、施設の技術そのものではありません。
**「行政の決め方」**です。
普通なら、
「老朽化した施設を建て替えます」
「ここに新しい施設をつくります」
と行政が候補地を決め、
その後に住民説明会を行う。
そんな流れを想像します。
ところが真庭市は違いました。
① そもそも、なぜ新しい施設が必要だったのか
真庭市では当時、3か所のごみ焼却施設が老朽化していました。
さらに、し尿処理場も更新時期を迎えていました。
つまり、
🔥焼却施設3か所
+
🚽し尿処理施設1か所
を、このまま建て替えるのか。
それとも、
もっと違う方法はないのか。
ここから発想が変わります。
真庭市は、
生ごみ
+
し尿
+
浄化槽汚泥
を一体的に処理し、メタン発酵によって、
バイオガス+液体肥料
に変える方向へ進みました。
② 「ごみ処理」から「資源循環」へ
真庭市の試算では、
3つの焼却場を建て替えず、1つに統合。
し尿処理場を廃止。
新たに生ごみ等資源化施設を整備。
この方法なら、
約120億円
↓
約70億円
と、施設再整備にかかる事業費を約50億円削減できる可能性があるとしました。
さらに、
年間約5億円
の維持管理費削減も見込んでいました。
ここは大きい。
単なる環境政策ではありません。
財政問題から出発した政策でもある。
③ そして、真庭市は実証実験から始めた
いきなり70億円の施設をつくったわけではありません。
2014年、
バイオ液肥事業
に着手。
地元の「真庭広域廃棄物リサイクル事業協同組合」と連携し、液肥を使った米や野菜の栽培実験を始めました。
翌2015年には、事業協同組合が液肥実証プラントを整備。
久世地区で生ごみを分別収集し、
生ごみ → 液肥
という仕組みを実際に試しました。
さらに2017年からは、
「バイオ液肥無料スタンド」
まで設置。
市民に実際に使ってもらいました。
④ ここが今回、一番すごい
施設をつくる前に、
「本当に市民は生ごみを分別してくれるのか?」
「本当に液肥を使ってくれるのか?」
「本当に農家は使いたいと思うのか?」
を実験した。
真庭市自身が振り返って、
生ごみが集まるか
液肥ができるか
誰が液肥を使うのか
この3つが大きな課題だったとしています。
そして、これらを13年間かけて実証・改善してきました。
これは政策として非常に重要です。
「建ててから考える」のではなく、
「考えて、試して、改善してから建てる」。
⑤ そして、施設の「場所」を公募した
ここです。
真庭市は、
「生ごみ等資源化施設 建設候補地の公募」
を行いました。
しかも単純に、
「土地を提供してください」
ではありません。
公募資料には、
「地域活性化アイデアと合わせて応募してください」
とあります。
例えば、
「地域でバイオ液肥を使ってみたい」
「バイオ液肥で育てた野菜の販売所をつくりたい」
「農家レストランをしたい」
など、
施設を地域活性化にどう活用するか
まで提案してほしいと呼びかけました。
これ、かなり画期的だと思います。
⑥ 市民説明会も7会場で開催
公募に先立ち、
久世公民館
美甘振興局
落合総合センター
勝山文化センター
八束コミュニティセンター
北房文化センター
湯原ふれあいセンター
の7会場で説明会を開催。
資源循環の必要性やこれまでの取り組み、建設候補地公募について説明しました。
つまり、
「公募しました。以上。」
ではありません。
公募の前に、
なぜ必要なのかを説明する。
ここも大切です。
⑦ 結果、6件の応募
2018年3月の真庭市長の所信表明には、
「施設建設候補地を公募したところ6件の応募がありました」
と明記されています。
そして、
第三者選定委員会
による客観的な検討を経て設置場所を決める、と説明しています。
その後、2018年には「地域提案選定委員会」が設置され、8月には評価方法などを決定。
9月末を目途に最終候補地を決める方針が示されました。
そして、2018年のうちに建設候補地が決定。
国の資料でも平成30年2月に候補地が決定したことが確認されています。
⑧ 「受け入れてくれる地域」を探すのではなく、
「地域から手を挙げてもらう」
私はここに大きな意味を感じます。
行政から、
「ここに施設をつくります」
ではなく、
「地域の皆さん、もし受け入れるなら、地域をどう良くしますか?」
と問いかける。
これは発想が全く違います。
もちろん、
「公募したから住民合意が完成した」
という単純な話ではありません。
施設には、
- 臭気
- 交通
- 周辺環境
- 安全性
- 景観
などの不安があります。
実際、公募資料でも臭気対策や、1日百数十台程度の収集・運搬車両等の出入りについて説明されています。
だからこそ、
メリットだけでなく、負担やリスクも説明する。
ここが重要です。
⑨ そして「施設をつくって終わり」ではない
現在の施設、
「真庭市くらしの循環センター」
愛称「まにくるーん」
は、2025年1月から本格稼働。
処理能力は、
生ごみ
年3,000トン
し尿・浄化槽汚泥
年30,000トン
合計、
約33,000トン/年
です。
そして、
生ごみ・し尿・浄化槽汚泥
↓
メタン発酵
↓
バイオガス
+
バイオ液肥
へ。
さらに液肥を濃縮する。
⑩ 「液肥をつくったけど使われない」を防ぐ
ここも真庭市の長い実証の成果です。
従来の液肥は水分が多く、
運ぶのが大変。
散布にも大型機械が必要でした。
そこで、
約7倍の濃縮
を計画。
運搬量を減らし、小型機械でも散布しやすくする。
つまり、
「作る技術」だけではなく、「使うところまで」設計した。
⑪ さらに「誰が施設を運営するのか」
現在の施設運営は、
真庭広域廃棄物リサイクル事業協同組合
が受託しています。
つまり、
行政が施設を整備する。
↓
地域の民間事業者が運営する。
↓
市民が生ごみを分別する。
↓
農家が液肥を使う。
↓
農産物を生産する。
という、
行政・企業・市民・農家
の循環です。
⑫ さらに施設そのものも「競争」で決めている
ここも非常に興味深いところです。
生ごみ等資源化施設の整備事業者については、
公募型のプロポーザル
が行われました。
優先交渉権者となったのは、
西原環境・梶岡建設特定建設工事共同企業体。
総合評価は、
67.4点/100点
でした。
その審査には、
岡山大学
鳥取環境大学
京都大学
ノートルダム清心女子大学
などの研究者に加え、真庭市の担当部長・課長らが参加しています。
⑬ 液肥濃縮施設も同じ考え方
さらにバイオ液肥濃縮施設についてもプロポーザルを実施。
優先交渉権者は、
菱冷・梶岡特定建設工事共同企業体。
総合評価は、
76.15点/100点
でした。
ここから見えてくるのは、
「行政が全部決める」のではない。
地域から提案を募る。
↓
第三者が評価する。
↓
専門家を入れる。
↓
事業者にも技術提案を求める。
という、
開かれた意思決定
です。
⑭ 真庭市が13年間でやったこと
時系列にすると、非常に分かりやすいです。
2014年
バイオ液肥事業開始
↓
2015年
実証プラント整備
↓
2016年
液肥を使った農業実証を拡大
↓
2017年
液肥無料スタンドを設置
建設候補地の公募開始
↓
2018年
候補地決定
第三者による選定
↓
2019~2020年
環境調査・設計など
↓
2021年
施設建設着工
↓
2025年
「まにくるーん」本格稼働
つまり、
約10年以上かけて、実証→公募→選定→建設→運用
まで進めています。
⑮ そして、今も「循環」を改善している
真庭市は2026年3月に新しい一般廃棄物資源化等基本計画を策定。
基本理念は、
「資源を捨てない持続可能な地域社会の実現」
です。
2025年度の可燃ごみは、
2024年度
9,774トン
↓
2025年度
7,957トン
となり、
18.6%減
となっています。
もちろん、これは「まにくるーんだけ」の効果と断定してはいけません。
分別など複数の施策が関係しています。
ここも、数字を正しく読むことが大切です。
📝 吉村メモ
今回、私が一番学びたいのは、
「し尿処理施設を公募した真庭市はすごい」
ということだけではありません。
もっと本質的なことです。
行政が何か大きな施設をつくるとき、
「行政が決めて、住民に理解してもらう」
という順番だけが正解なのか。
真庭市は、
①課題を公開する
↓
②必要性を説明する
↓
③小さく実証する
↓
④地域から提案を募る
↓
⑤第三者・専門家が評価する
↓
⑥事業者にも技術提案を求める
↓
⑦地域の資源として運用する
というプロセスを積み重ねました。
私は、ここにこれからの自治体経営のヒントがあると思います。
岐阜市ならどうする?
例えば、
ごみ処理施設。
下水道。
し尿処理。
最終処分場。
公共施設。
大きな事業には、必ず地域との関係があります。
そのとき、
「どうすれば住民に理解してもらえるか」
だけではなく、
「住民が参加することで、もっと良い施設にできないか。」
と考える。
そして、
「この施設を地域に置くことで、地域にどんな価値を返せるのか。」
まで最初から考える。
私は、これが大切だと思います。
「迷惑施設」という言葉を、
「地域の資源拠点」に変えられるか。
もちろん、何でも公募すれば良いわけではありません。
安全性、費用、環境、交通、立地条件など、行政が責任を持って判断しなければならないこともあります。
だからこそ、
「公募=住民に丸投げ」ではない。
行政が責任を持ちながら、
市民・専門家・事業者・地域
に知恵を開く。
私は、このバランスを学びたいと思いました。
行政の仕事は、決めることだけではない。
より良い答えを、一緒につくることでもある。
これが、今回の真庭市から私が学んだことです。

