【全国まちづくり100選 #16 岡山県真庭市】

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なぜ、真庭市では「し尿・生ごみ処理施設」の建設地を公募したのか。

― 「迷惑施設」ではなく「地域資源の拠点」に変える行政の挑戦 ―

今回、私がこの事例を取り上げたいと思ったのは、施設の技術そのものではありません。

**「行政の決め方」**です。

普通なら、

「老朽化した施設を建て替えます」

「ここに新しい施設をつくります」

と行政が候補地を決め、

その後に住民説明会を行う。

そんな流れを想像します。

ところが真庭市は違いました。


① そもそも、なぜ新しい施設が必要だったのか

真庭市では当時、3か所のごみ焼却施設が老朽化していました。

さらに、し尿処理場も更新時期を迎えていました。

つまり、

🔥焼却施設3か所

🚽し尿処理施設1か所

を、このまま建て替えるのか。

それとも、

もっと違う方法はないのか。

ここから発想が変わります。

真庭市は、

生ごみ

し尿

浄化槽汚泥

を一体的に処理し、メタン発酵によって、

バイオガス+液体肥料

に変える方向へ進みました。 


② 「ごみ処理」から「資源循環」へ

真庭市の試算では、

3つの焼却場を建て替えず、1つに統合。

し尿処理場を廃止。

新たに生ごみ等資源化施設を整備。

この方法なら、

約120億円

約70億円

と、施設再整備にかかる事業費を約50億円削減できる可能性があるとしました。

さらに、

年間約5億円

の維持管理費削減も見込んでいました。 

ここは大きい。

単なる環境政策ではありません。

財政問題から出発した政策でもある。


③ そして、真庭市は実証実験から始めた

いきなり70億円の施設をつくったわけではありません。

2014年、

バイオ液肥事業

に着手。

地元の「真庭広域廃棄物リサイクル事業協同組合」と連携し、液肥を使った米や野菜の栽培実験を始めました。

翌2015年には、事業協同組合が液肥実証プラントを整備。

久世地区で生ごみを分別収集し、

生ごみ → 液肥

という仕組みを実際に試しました。 

さらに2017年からは、

「バイオ液肥無料スタンド」

まで設置。

市民に実際に使ってもらいました。 


④ ここが今回、一番すごい

施設をつくる前に、

「本当に市民は生ごみを分別してくれるのか?」

「本当に液肥を使ってくれるのか?」

「本当に農家は使いたいと思うのか?」

を実験した。

真庭市自身が振り返って、

生ごみが集まるか
液肥ができるか
誰が液肥を使うのか

この3つが大きな課題だったとしています。

そして、これらを13年間かけて実証・改善してきました。 

これは政策として非常に重要です。

「建ててから考える」のではなく、

「考えて、試して、改善してから建てる」。


⑤ そして、施設の「場所」を公募した

ここです。

真庭市は、

「生ごみ等資源化施設 建設候補地の公募」

を行いました。

しかも単純に、

「土地を提供してください」

ではありません。

公募資料には、

「地域活性化アイデアと合わせて応募してください」

とあります。

例えば、

「地域でバイオ液肥を使ってみたい」

「バイオ液肥で育てた野菜の販売所をつくりたい」

「農家レストランをしたい」

など、

施設を地域活性化にどう活用するか

まで提案してほしいと呼びかけました。 

これ、かなり画期的だと思います。


⑥ 市民説明会も7会場で開催

公募に先立ち、

久世公民館
美甘振興局
落合総合センター
勝山文化センター
八束コミュニティセンター
北房文化センター
湯原ふれあいセンター

の7会場で説明会を開催。

資源循環の必要性やこれまでの取り組み、建設候補地公募について説明しました。 

つまり、

「公募しました。以上。」

ではありません。

公募の前に、

なぜ必要なのかを説明する。

ここも大切です。


⑦ 結果、6件の応募

2018年3月の真庭市長の所信表明には、

「施設建設候補地を公募したところ6件の応募がありました」

と明記されています。

そして、

第三者選定委員会

による客観的な検討を経て設置場所を決める、と説明しています。 

その後、2018年には「地域提案選定委員会」が設置され、8月には評価方法などを決定。

9月末を目途に最終候補地を決める方針が示されました。 

そして、2018年のうちに建設候補地が決定。

国の資料でも平成30年2月に候補地が決定したことが確認されています。 


⑧ 「受け入れてくれる地域」を探すのではなく、

「地域から手を挙げてもらう」

私はここに大きな意味を感じます。

行政から、

「ここに施設をつくります」

ではなく、

「地域の皆さん、もし受け入れるなら、地域をどう良くしますか?」

と問いかける。

これは発想が全く違います。

もちろん、

「公募したから住民合意が完成した」

という単純な話ではありません。

施設には、

  • 臭気
  • 交通
  • 周辺環境
  • 安全性
  • 景観

などの不安があります。

実際、公募資料でも臭気対策や、1日百数十台程度の収集・運搬車両等の出入りについて説明されています。 

だからこそ、

メリットだけでなく、負担やリスクも説明する。

ここが重要です。


⑨ そして「施設をつくって終わり」ではない

現在の施設、

「真庭市くらしの循環センター」

愛称「まにくるーん」

は、2025年1月から本格稼働。

処理能力は、

生ごみ

年3,000トン

し尿・浄化槽汚泥

年30,000トン

合計、

約33,000トン/年

です。 

そして、

生ごみ・し尿・浄化槽汚泥

メタン発酵

バイオガス

バイオ液肥

へ。

さらに液肥を濃縮する。


⑩ 「液肥をつくったけど使われない」を防ぐ

ここも真庭市の長い実証の成果です。

従来の液肥は水分が多く、

運ぶのが大変。

散布にも大型機械が必要でした。

そこで、

約7倍の濃縮

を計画。

運搬量を減らし、小型機械でも散布しやすくする。

つまり、

「作る技術」だけではなく、「使うところまで」設計した。


⑪ さらに「誰が施設を運営するのか」

現在の施設運営は、

真庭広域廃棄物リサイクル事業協同組合

が受託しています。 

つまり、

行政が施設を整備する。

地域の民間事業者が運営する。

市民が生ごみを分別する。

農家が液肥を使う。

農産物を生産する。

という、

行政・企業・市民・農家

の循環です。


⑫ さらに施設そのものも「競争」で決めている

ここも非常に興味深いところです。

生ごみ等資源化施設の整備事業者については、

公募型のプロポーザル

が行われました。

優先交渉権者となったのは、

西原環境・梶岡建設特定建設工事共同企業体。

総合評価は、

67.4点/100点

でした。

その審査には、

岡山大学
鳥取環境大学
京都大学
ノートルダム清心女子大学

などの研究者に加え、真庭市の担当部長・課長らが参加しています。 


⑬ 液肥濃縮施設も同じ考え方

さらにバイオ液肥濃縮施設についてもプロポーザルを実施。

優先交渉権者は、

菱冷・梶岡特定建設工事共同企業体。

総合評価は、

76.15点/100点

でした。 

ここから見えてくるのは、

「行政が全部決める」のではない。

地域から提案を募る。

第三者が評価する。

専門家を入れる。

事業者にも技術提案を求める。

という、

開かれた意思決定

です。


⑭ 真庭市が13年間でやったこと

時系列にすると、非常に分かりやすいです。

2014年

バイオ液肥事業開始

2015年

実証プラント整備

2016年

液肥を使った農業実証を拡大

2017年

液肥無料スタンドを設置
建設候補地の公募開始

2018年

候補地決定
第三者による選定

2019~2020年

環境調査・設計など

2021年

施設建設着工

2025年

「まにくるーん」本格稼働

つまり、

約10年以上かけて、実証→公募→選定→建設→運用

まで進めています。


⑮ そして、今も「循環」を改善している

真庭市は2026年3月に新しい一般廃棄物資源化等基本計画を策定。

基本理念は、

「資源を捨てない持続可能な地域社会の実現」

です。

2025年度の可燃ごみは、

2024年度
9,774トン

2025年度
7,957トン

となり、

18.6%減

となっています。 

もちろん、これは「まにくるーんだけ」の効果と断定してはいけません。

分別など複数の施策が関係しています。

ここも、数字を正しく読むことが大切です。


📝 吉村メモ

今回、私が一番学びたいのは、

「し尿処理施設を公募した真庭市はすごい」

ということだけではありません。

もっと本質的なことです。

行政が何か大きな施設をつくるとき、

「行政が決めて、住民に理解してもらう」

という順番だけが正解なのか。

真庭市は、

①課題を公開する

②必要性を説明する

③小さく実証する

④地域から提案を募る

⑤第三者・専門家が評価する

⑥事業者にも技術提案を求める

⑦地域の資源として運用する

というプロセスを積み重ねました。

私は、ここにこれからの自治体経営のヒントがあると思います。


岐阜市ならどうする?

例えば、

ごみ処理施設。

下水道。

し尿処理。

最終処分場。

公共施設。

大きな事業には、必ず地域との関係があります。

そのとき、

「どうすれば住民に理解してもらえるか」

だけではなく、

「住民が参加することで、もっと良い施設にできないか。」

と考える。

そして、

「この施設を地域に置くことで、地域にどんな価値を返せるのか。」

まで最初から考える。

私は、これが大切だと思います。


「迷惑施設」という言葉を、

「地域の資源拠点」に変えられるか。

もちろん、何でも公募すれば良いわけではありません。

安全性、費用、環境、交通、立地条件など、行政が責任を持って判断しなければならないこともあります。

だからこそ、

「公募=住民に丸投げ」ではない。

行政が責任を持ちながら、

市民・専門家・事業者・地域

に知恵を開く。

私は、このバランスを学びたいと思いました。

行政の仕事は、決めることだけではない。
より良い答えを、一緒につくることでもある。

これが、今回の真庭市から私が学んだことです。

真庭市「くらしの循環センター・バイオ液肥事業」

真庭市「生ごみ等資源化施設整備工事の優先交渉権者」

真庭市「バイオ液肥濃縮施設整備工事」